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所沢航空発祥記念館で設計を考える。

設計の白比です。

所沢の航空発祥記念館へ行ってきました。もう何度か訪問しているのですが、いつも考えてしまう事があるのです。

そもそも、設計とは何のためにするのか。目的って何なのだろうか?という事なのです。

それを思い出させてくれるのが、航空発祥記念館に入ってすぐに展示してあるオレンジ色の飛行機です。

ノースアメリカンT-6G「テキサン」という愛称の練習機です。

お前は、設計者なのだからお施主様の要望通りの家を設計するのが目的だろう?当たり前の事になんで疑問を持つんだ?とお叱りの言葉を頂きそうですが、私が考えているのは、

「果たして本当に、お施主様の要望を受け止めることが出来ているのか?それを実現できているのか?」

ということなのです。

この、とても地味な練習機を良く観察すると恐ろしく堅実な設計をしているのに気づきます。頑丈なのです。無理をしていないのが見ていてわかる。あまりに無骨な外観がとってもつまらない。(こんな言い方したら失礼ですね。。。汗)

誰にでも操縦出来て、安全に飛ばせて、確実に目的を達成して帰ってくる。整備もし易いし、作りやすい。

この究極の平凡さが、この飛行機を発注したお客様の要望だったのだと思います。(デビュー当時は高性能だったのだと思います。失礼の無いように申し上げておきます。なにせ、この飛行機、あまり人気が無いので、手に入る文献がほとんど無いのです。)

でも、お客様の要望を完璧なまでに実現したから、ずっと使われ続けて、15,117機(!)も生産されたのです。

では、お客様の要望が、過激だったらどうなるのか?わかり易い例があります。あまりに有名なこの飛行機です。

零式艦上戦闘機52型です。あまりに有名。

これが、一番わかり易いでしょう。この飛行機を発注したお客様の要望は、

当時の仮想敵国の所有している戦闘機より速くて、長距離を飛べて、運動性能が良くて(空中戦で勝つ為です。)、大きな機関銃が積めて、船の上から飛べることでした。

当時の日本の設計者にとっては、たいした技術も生産力も無い中での実現は、ほぼ不可能な要求だったようです。(特にエンジンの技術力の無さが致命的でした)それでも要望を実現したのが、この飛行機だったのです。

見比べると設計者が何をしたのかが分かります。

ほぼ、同じ角度から撮った写真です。T-6の尾翼のラインと零戦の尾翼のライン。違いが歴然だと思います。零戦の線が恐ろしく厳しいラインを描いているのが分かりませんか?徹底的に無駄をそぎ落としています。生産するのも大変だったのが容易に想像できます。

機首の部分です。アップで見ると解るのですが、板金の加工の仕方、骨組みへの取付の仕方、リベット(鋲)止めの仕方を見ると背筋が寒くなります。零戦のリベットの頭は、平たく加工されています。空気抵抗を極限まで無くすための加工なのです。

エンジンの排気の仕方も違いが分かると思います。T-6は、太い排気管から垂れ流ししているだけですが、零戦は、排気ノズルを細く絞って何本も出し、推力として使っているのです。機体を支えているタイヤのついた主脚も丈夫一式のT-6に比較して、重量を限界まで削った細い主脚が際立っているのがお分かりいただけるでしょうか。

お客様の要求をどのように汲み取り、いかにしてそれに応えるか。平凡な設計と、限界を突き詰めた設計。どちらも、お客様の要望に技術者として誠実に対応した結果だと思います。

零戦も、10,430機(!)生産されたと言われています。(こんなに作りにくい機体なのに)どちらも、傑作機ですが、お客様の要望の違いと実現するための方法は、180°違うと言ってもいいでしょう。同じ設計と言っても、こうまで違うのはなぜなのか。お客様の要望をいかに受け止めて、いかに実現するかで、まるで違うものが生まれる。設計の奥深さと、生涯かける価値のある仕事なのだと心を新たにしてしまうのでした。

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